心療眼科の講演を聞いて勉強になった
こんにちは。
昨日は、久しぶりに六本木という都心で勉強会があり参加しました。
いつ行っても、六本木ってたくさん人がいますね。
まさに眠らない街って感じです。
さて、
昨日の勉強会は「心療眼科」という領域でした。
多分これは、一般の方はとてもご興味があるんじゃないかと思いますが、私たち眼科医はどちらかというと
苦手領域!
です。
なぜなら、ストレスなどの心の問題で、目には客観的にみて悪いところがないのに、患者さんは症状を訴える、というものだからです。
普通、私たちは、患者さんの身体に悪いところを見つけて、それに対する薬を処方したり、処置を行ったりして治そうとしているので、悪いところがないのに症状を訴えられると本当のところ困惑します。
昨日の講師の先生は、そういう領域に果敢にも立ち向かって行かれた、ということで、それだけでも
すごい!
と思ってしまいます。
さらにすごいと思ったのは、心が原因の眼症状を解明しようとして、精神科病院に眼科をわざわざ新設して、そこで10年以上いろんな症例を見てきた、という点。
世の中にはいろんな人がいるなあ、とそれだけで感心してしまいました。
講演の冒頭で、
「10年以上その病院で働いたけど、一番いろんな患者がいる病室があって、その病室の名前は”医局”」
とおっしゃっていたのには、一同失笑。
あ、これは多分にユーモアが含まれているんですけどね。
それはともかく、
提示される症例の中には、私たちが普段の診察で遭遇するのにソックリな訴えの患者さんなんかもいたりして、非常に参考になりました。
不定愁訴のような症状の方の中には、仮面うつ病が含まれていたり、そこまでひどくなくても別のストレスから逃れるために身体症状が無意識のうちに出ていたり・・・とやむを得ない仕組みで症状が出ていることには変わりないのですね。
逆に、普段仕事をしていると、
「感染症以外の病気は、ほとんどストレスで発症するんじゃないだろうか?」
と思えてくるときもあります。
(これは完全に私の個人的見解です。念のため)
それにしても、本当のうつ病なんかは精神科でしっかり治療してもらうことが必要です。
また、ストレスが誘因でも、本当にどこかが病気になってしまっている人には、薬を処方したりして対応すればいいのですが、悪いところがないのに痛みなどの症状が出ている人には、カウンセリングが必要なんだそうです。
そして、そのカウンセリング、というのは、何かを指図するのではなく
とにかく傾聴すること
なんだそうです。
そして、本人が自分で
「もしかしたら自分の症状は精神的な原因からきているものなのかも」と
自覚するまで気長に待つ。
1回のカウンセリングでどうかなるものではなく、何週間か間をあけてまた傾聴を繰り返す。
でも、そうやって話していると、診察と診察の合間に、本人が自分で深く考えて、気づきがあって、徐々に回復に向かって行くことがある。
そうやって最終的に患者さんの症状が取れて、明るい表情になると、とても嬉しくなってやりがいを感じる、とも。
医学が発達しても、人間の心が発達するわけじゃない。
むしろ、人間の心は太古の昔から変わっていないわけです。
だから、こういう診察の仕方が必要な患者さんって必ず一定の割合でいるんでしょうね。むしろ、世の中が便利になればなるほど、割合は増えるのかもしれません。
ただ、それを普段の殺人的に忙しい外来で丁寧にして行くのはなかなか難しそう。
フロアからの、「一回の診察にどのぐらい時間をかけているんですか?」という質問に、さらっと
「初回は30分ぐらいですね」
と、さらっと!!!
それは、なかなか厳しいかも・・・。
いや、そうしたいのは山々だけど、本当のところ眼科は平均しても半日で30人ぐらいは診察しないと成り立たないことが多いので、一人30分はかなり厳しい・・・。
また、
「カウンセリングは簡単です。聞くだけです」
とおっしゃっていたのですが、絶対、質問の仕方なんかもちゃんと勉強したほうが良さそうだと思いました。
なんの講習も受けず、基礎知識もないまま適当に傾聴しても、逆効果ってこともあると思う。
それにしても、医者の仕事って、AIなどの科学技術を使いこなし、標的細胞を選択的に攻撃するような高度なことと、このような太古から変わらない人の心に向き合うようなこと、という両極端に分かれて行くんでしょうか。