直接受診して下さい!
一般の方向けの講演会なんかで目の話をしたりすると、決まって出るけど答えられない質問は、
「私の場合はどうですか?」
「他の病院に行ったら手術を勧められたんですが、した方がいいですか?」
などというものです。
これ、気持ちはとてもわかるんだけど、なかなかお答えできないんですね。
なぜなら、実際に視力とか目の状態を検査してみないと、正確なことは言えないからです。
「正確じゃなくていいので一般的なことが知りたいんです」
と言われるかもしれませんが、一般的なことならいろいろ情報はあるわけで、やはりその方はご自分のことが知りたいわけですから。
これは、ケチや意地悪じゃなくて、本当にその人に適した方法をお伝えするのは、診察しないと無理なんです。
例えば、円錐角膜の治療にしても、実際の診察の時には、年齢、病期(病気の進み具合)、そのかたの職業、どんなゴールを目指しているのか(どの程度の視力を求めているのか)なども考え合せた上で、どの程度急いでどんな治療が必要なのかを提案しています。
近視矯正にしても、レーシックでできるのか、眼内レンズ(ICLなど)ができるのか、は度数に加えて、かなり細かく眼球の解剖学的な構造を測定してみないとはっきりしたことは言えません。
そのほかにも、一般的な白内障の手術や角膜の手術なども、やはりできるかできないかは、その病気の部位だけではなくて、他のことまで総合的にみないとなんとも言えないんです。
(他の科の病気でも同じことだと思います)
うちの息子が・・・とかおばあちゃんが・・・というのはもっと困ります。
さらに間接的な情報しかないわけですからね。
あと、よくあるのが
「視力どのぐらいですか?」と言う問いに対して、
「全く見えません」「0.1もありません」
と言うやつです。
(息子さんやおばあちゃんの場合には、これもさらに不確実。「あら、どのぐらい見えるのかしら・・? テレビは見てます」という具合に)
一般的に、我々眼科医が知りたい視力というのは、裸眼視力ではなくて矯正視力のことです。
眼鏡やコンタクトレンズをした状態で、最高どのぐらい見えるのか?
ということ。
なぜなら、それは眼球に「見る能力」がどのぐらいあるのか?ということだからです。ピントをきちんと合わせたらどのぐらいの分解能があるのか?というのが、大切なのです。
裸眼視力というのはピントがあってない状態なので、悪くても不思議じゃないのです。
これがなかなか伝わらなくて、
「本当に全然見えないんです!!」
(と言われるんだけど、実際に測ると矯正視力1.5だったりする)
ってこと、よくあるんですよね・・・
でも、そういうのは、ご自分が知らないのはある意味当たり前なので、別に責めてるわけじゃありません。
だけど、こういう基本的な情報なしに、その方その方に適した方法をご説明するのは、本当に無理なので、もし何か知りたいな、と思う方は、ぜひ病院やクリニックを受診して、自分に合った方法について直接聞いてください。
そして、わからないことや疑問に思うことは、そこで心ゆくまで聞いてくださいませ。
あれこれ悩むより、結局それが一番早くて、確実な方法だと思います。
それで、皆さんがご存知ない、他の良い方法をご提案できることもあるかもしれませんからね。