クロスリンキングは痛いの?
角膜クロスリンキングについて、何度も書いててしつこいようですが、もう一度。
先日、業者さんで興味を持ってくださる方がいました。
と言っても、その会社で扱ってくれるとかじゃなくて、営業の方が個人的に興味持ってくださった、ということです。
こういうこと、よくあります。
で、その方が行った営業先の医院で
「クロスリンキングは痛いんでしょ?」
と言われた、と。
それで、
「本当に痛いんですか?」
と質問されました。
答えは、残念ながら「痛いです」。
もちろん術中は麻酔(点眼麻酔です)をしているので痛くないです。
でも、手術が終わった後、1〜2日はごろごろする感じがして、人によっては痛み止めを使うぐらいです。
もちろん、なるべく痛みが少なくなるように、絆創膏代わりのソフトコンタクトレンズ(これをするとかなり痛みが和らぎます)をつけてもらうし、痛み止めも処方します。
だけど、痛みって個人の差が大きいので、割と平気な人も時々いるけど、特に若い人なんかは何をしても完全には取れません。
あと、Epi-Onという、上皮を取らないので術後痛くないのがウリの方法もありますが、こちらの方法は、明らかに効果が弱いことが報告されています(下記文献参照)。
残念ですが、10歳代とか20代前半までの若い方は、痛くても普通の方法でやったほうがいいと思います。
でも、これは痛い、痛くないの問題じゃないんです。
なぜなら、円錐角膜が進んでしまうと、本当に生活に支障をきたしてしまうケースがあるからです。
中等度以上に進行すると、コンタクトレンズも普通の人用のができなくなります。
最近では、特殊レンズもすごく発達して、いろんなのが出て来ていますが、値段も高いし、落としたらショックだし、スポーツとかにハードレンズは向きません。
さらに重症になってくるとそういうのを使っても装用感が悪い、落ちやすい、何時間かが限界、ということになって、現実的に日常生活で使えていません、という人も結構見かけます。
そんな風になってしまうと、日常生活も、職業を選ぶ上でも制約が大きくなるし、それでお仕事できなくなって辞めました、とか、何かを諦めました、というのは本当に切ない。
だから、なるべく軽症のうちに、できれば普通の人用のハードコンタクトで良い視力が出るうちに、できればスポーツの時にはソフトコンタクトで大丈夫、といううちに止めた方がいいでしょう? という話なんです。
1〜2日痛いとか、そんなことと比べることじゃないんです。
あとは、どうしても罹患人口が少ない、会社が儲けにならない、ということで、サポートが得られない。厚労省が承認を出してくれない、という問題。
もうこれはどうしたらいいのか、わかりませんが、海外はクロスリンキングに経済的な補助がある国がすごく多いんです。
こんな未だに怪しい治療みたいに言われてるの、日本だけですから。
これじゃあ、ガラパゴスになっちゃいますよ!
そういうわけなので、クロスリンキングは未承認治療だし、確かに術後何日か痛いですが、非常に価値のある治療です。
予防接種みたいなものです。ほんの短時間の痛みを嫌がって予防接種しないと、命に関わる病気になりますよね?
あと、よく誤解されてるのが、ハードコンタクトレンズや角膜リングでも円錐角膜の進行が止められる、と思われてること。
ハードコンタクトや角膜リングでは進行は止まらない、というエビデンスがたくさんありますので。
なので、しつこいですが、最後にもう一度。
円錐角膜の進行を停止できるという科学的な根拠が示されているのは、現段階ではクロスリンキングだけです。
でも、こういう議論でも、興味を持っていただいて、俎上に載せてもらえることはとても良いことだと思ってます。
話題にしてもらえることが大切ですね。
参考文献
Kobashi H, Tsubota K. Accelerated Versus Standard Corneal Cross-Linking for Progressive Keratoconus: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Cornea. 2019 Aug 2. doi: 10.1097/ICO.0000000000002092. [Epub ahead of print]
Kobashi H, Rong SS, Ciolino JB. Transepithelial versus epithelium-off corneal crosslinking for corneal ectasia. J Cataract Refract Surg. 2018 Dec;44(12):1507-1516.
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