World Keratoconus Day(世界円錐角膜デイ)

11月10日は世界円錐角膜デイです。いつ誰が決めたのか知りませんが、アメリカにあるNational Keratoconus Foundation (NKCF)という団体のウェブサイトにいつも掲載されています。患者さんたちが集まって病気について語り合ったり、いろんなイベントをしているようです。日本でも何かやれたらいいなあ、と去年も思っていたんですが、結局なんとなく忙しさに紛れて何もしないまま過ぎてしまいました。なので、せめてリマインドという意味も込めて、円錐角膜について書いておきたいと思います。

円錐角膜は、眼科医ならば誰もが知っている病気、また眼科じゃなくても医師であれば一度は聞いたことのある病気で、決して珍しい病気ではありません。頻度は、人口500〜2000人に一人ぐらいと以前から言われていましたが、最近の統計では100〜200人に一人はいるというレポートもあります。また、レーシックなどの屈折矯正手術を専門にしているようなクリニックでは、受診した人の3%ぐらいに円錐角膜またはその傾向が見られると言われています。

なので、極端な話、中学や高校の1学年に1人ぐらいは円錐角膜の人がいてもいいということになります。(レーシックなどを受ける人は近視の人が圧倒的に多いので、そこで少しバイアスがかかって、全体より高いパーセンテージになると考えられます。)

前にも書いたように、円錐角膜は以前は不治の病でした。青年期に発病して、年齢が増すにしたがって徐々に悪くなっていって、やがてメガネでは良好な視力が得られなくなります。そうするとハードコンタクトレンズをしなくてはならなくなり、さらに病気が進行すると通常のハードコンタクトレンズが合わなくなってしまって特殊レンズが必要になり、さらに悪くなると特殊レンズも合わなくなり角膜移植をしないと視力を取り戻せなくなります。

しかし、角膜クロスリンキングという手術が今世紀の初めに開発されたことで、ほぼ90%以上の人で円錐角膜の進行を止めることができるようになってきました。

このように、治療法が出てきて軽いうちに病気の進行を抑えてしまうことができるのは、とても喜ばしいことです。というのは、軽いうちなら円錐角膜の人でもメガネやコンタクトレンズでも日常生活に必要な視力が保たれることもあるし、ハードコンタクトレンズをするにしても特殊なレンズを使わなくても普通の規格のレンズでも大丈夫なこともあります。ハードコンタクトが痛くてつけられないという人の割合も、病気が軽いうちは少ないのです。しかも、その時のコンディションや予定に合わせて、いろんな方法の中から自分で矯正法を選べる、

つまり「今日は運転するからよく見えるようにハードコンタクトにしよう」とか「今日は寝坊しちゃったからメガネにしよう」と選ぶ自由が残される、ということです。

ところが、まだ病気が進んでないうちに手術をするのは、誰だって嫌なものです。

特に、角膜クロスリンキングは健康保険が使えないので自費でお金を払って受けなくてはなりません。「まだ何も困っていない。メガネで十分見える(場合によっては片目が悪いけど反対がまだいいのであまり困っていない、など)。今はしたくない」という方もいます。

しかし、特に年齢が若い方の場合、そうやって数ヶ月放置しておくとその間に病気が進んでしまって、半年〜1年後には驚くほど悪くなってしまうこともあるのです。ですから、「この手術は予防注射のようなものです。今後もっと悪くならないように今のうちにしておいたほうがいいですよ」とご説明をすることがあります。また、そのように認識していただければいいな、と思っています。

痛くもないし困ってもいないのにいきなり目に手術をするのは嫌なものですよね。だけど、上記のように悪くならないうちに直したほうが後の生活は圧倒的に過ごしやすくなるのは、予防注射に近い考え方だと思います。

しかし、実はこれは円錐角膜に限らずどんな病気でも同じことが言えることですね。時々「心配な症状があるけど、怖いから病院に行きたくない。本当のことを知りたくない」と言う人がいますが、本当に怖いのは病気が進んでしまってちゃんと直らない状態になってしまうこと。

だから、そこを冷静に考えて、心配な症状があればなるべく早くに病院に行って、本当に心配したほうがいいのか、心配しなくてもいいのか調べてもらいましょう。

ちなみに、円錐角膜が心配される状態とは、

1.近視や乱視が数ヶ月〜数年単位で急激に進んできて、メガネやコンタクトが合わなくなってくる。

2.両眼の視力がアンバランス。

3.見ようとするものや街灯の光などが何重にも重なって見えたり、彗星が尾を引っ張るような形にぼやけて見える。

4.アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー体質がある。

5.親や兄弟などで円錐角膜の人がいる。

などです。全部揃わなくても、1〜2個当てはまれば、調べておく価値はあると思います。特に、中高生から大学生ぐらいの年齢で発症しやすいので、その年齢の人は要注意です。円錐角膜が心配な場合には、近くの眼科で診察をしてもらえばすぐにわかります。

多分大抵の場合は円錐角膜ではない、ということがわかって気持ちがスッキリすると思いますし、万一本当に円錐角膜だったとしても、今の時代は軽いうちに進行を止めることができますから。

軽いうちに進行を止めてしまえば「いつかもっと悪くなってしまうんだろうか」という不安に苛まれることなく、やはりスッキリした気持ちでその後の日々を過ごすことができます。今ではもう円錐角膜は早期治療できる病気になったのです。

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