角膜クロスリンキングアップデート(2019年1月現在)

円錐角膜の進行を停止させる治療、角膜クロスリンキングについて、最近の知見について自分の意見も踏まえながらまとめてみます。ちょっと専門的な話になります。

角膜クロスリンキングは、2003年にドイツのドレスデン大学で開発された治療で、角膜にリボフラビンというお薬を点眼し、薬がよく染み込んだところに紫外線を照射するという方法です。これによって角膜が変形しにくくなり、円錐角膜の進行が止まる治療です。(下記参照)

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当初、ドレスデン大学の先生たちが開発した方法は、まずリボフラビンを角膜に染み込ませるために、角膜上皮(角膜の表面を覆っている表皮のような皮の部分)を取り除いて、リボフラビンを30分間点眼し、その後長波長紫外線(UVA)を3.0mW/cm2で30分間照射する、というものでした。これは、角膜クロスリンキングの標準法とも言われる方法で、ドレスデン大学の名前をとって「ドレスデン法」とも呼ばれています。

ドレスデン法が円錐角膜が進行するのを90%以上の高い確率で止めてくれることはすでに実績があってはっきりしています。しかし、ドレスデン法は、30分間リボフラビンを点眼し、その後30分間も紫外線を照射するというもので、合計1時間も手術室で上を向いて寝ていなくてはなりません。1時間も目を開けた状態で上を向いて微動だにせずにじっとしているのは相当辛いことです。これについては、世界中の人たちが同じように思ったようで、それから数年後に高速法という変法が開発されました。これは、紫外線のエネルギー量は時間と強度の積で決まってくるので、Bunsen-Roscoeの光化学の法則という理論に基づき「紫外線の強度を上げれば照射時間を短くできる」とする考え方です。つまり紫外線の強度を3倍にすれば照射時間を1/3に、紫外線強度を6倍にすれば照射時間は1/6にできるというものです。

もう1つ出てきたのが、ドレスデン法では角膜上皮を取るために、手術の後角膜に傷がついているような状態になってしばらく痛いので、角膜上皮を取らずに治療をする方法です。そのために、角膜上皮を取らなくても細胞の間を通過して角膜に染み込む特殊なリボフラビンが開発され、さらに紫外線の条件なども少し工夫されました。この方法をEpi-On法と言います。(それに対して、ドレスデン法のように上皮を取る方法のことをEpi-Off法ということもあります。)

高速法もEpi-On法も、ドレスデン法の短所(時間がかかって辛いとか、痛いとか)をカバーする良いオプションではあるのですが、問題は本当にドレスデン法と同じような効果があるのか、合併症の発生率はどうなのか、ということです。幸いなことに、世界中の眼科医たちが、自分たちが行なった治療の経過を論文にして発表してくれているので、そういう情報をもとにしながら随時客観的な判断をしていく必要があります。さらには、自分の経験も必ず振り返って確認することも重要です。

さて、私自身は、これまで世界から発表されてきたデータと、自分たちが行なってきた治療データを振り返った上で、高速法はドレスデン法と遜色ない、むしろ利点も多いと現時点では考えています。また、Epi-On法については、痛みや合併症が少ないことが報告されていますが、円錐角膜の進行を止める力についてはドレスデン法と比べて明らかに弱いとするデータもありますので、これについては長期的な結果が報告されるのを待つ必要があるだろうと思っています。

何れにしても、どのような病気についても医学の進歩とともに治療法はアップデートされていくので、ノーベル賞を取られた本庶先生もおっしゃっていたように教科書を鵜呑みにするのではなく、常に情報を収集しつつ良く考えてその時のベストと考えられるものを選んでいくことが大切でしょう。

参考文献

1. Mohammadpour M, Masoumi A, Mirghorbani M, Shahraki K, Hashemi H. Updates on
corneal collagen cross-linking: Indications, techniques and clinical outcomes. J
Curr Ophthalmol. 2017 Sep 12;29(4):235-247.

2. Li W, Wang B. Efficacy and safety of transepithelial corneal collagen
crosslinking surgery versus standard corneal collagen crosslinking surgery for
keratoconus: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Ophthalmol.
2017 Dec 28;17(1):262.

3. Kato N, Konomi K, Shinzawa M, Kasai K, Ide T, Toda I, Sakai C, Negishi K,
Tsubota K, Shimazaki J. Corneal crosslinking for keratoconus in Japanese
populations: one year outcomes and a comparison between conventional and
accelerated procedures. Jpn J Ophthalmol.2018 Jul 10. doi:
10.1007/s10384-018-0610-9.

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