すぐ受診しなくてはならない眼科疾患

新型コロナウイルスがどんどん世界中に蔓延して、とうとうパンデミックになってしまいました。

欧米諸国は、国境封鎖どころか、外出禁止になってるところもあります。1ヶ月前まで、こんなことになるなんて、誰も想像していなかったでしょう。

ノーベル賞を取られた山中伸弥先生が、コロナウイルス に関する正しい情報を発信するウェブサイトを立ち上げられました。さすがだな〜。

微力ながら私も、自分にできる範囲で、周りの人に役に立つことをしたいものです。

と言っても、ウイルスの専門家でもないし、呼吸器の専門家でもないし、病院でも全身疾患の診療ではほとんどお役に立てない眼科医なので、何ができるかと考えたとき、やはり自分の得意分野に関する情報発信がいいかな、と思います。

先日下記のような投稿をしました。

なので、それに続いて今日は、すぐ受診しなくてはならない眼科疾患と、すぐに受診しなくて良い眼科疾患について、書いてみます。

病院が不必要に混まないように。でも、様子を見ていてはいけないものがわかるように、ということで。

まず、すぐに病院に来て欲しいものから。

  • 化学外傷:酸やアルカリが目にかかってしまった場合。すぐに大量の水(この場合水道水でも可)で洗いながら、病院に来てください。いかに早くたくさん洗えるかが結果を左右します。仕事で酸やアルカリを扱っている方、実験室、その他。気をつけてください。
  • 熱傷:やけどですね。これも化学外傷と同じです。
  • 外傷:特に、見えなくなって、目から「あたたかい涙」がたくさん出てきている場合。眼球穿孔している可能性があります。
  • 網膜動脈閉塞:脳梗塞が網膜に起きるようなものです。突然、視界全体、または一部に紫または黒の雲がかかったようになります。あっという間にその部分が見えなくなります。これは血栓が飛んだりして、網膜の動脈の一部または全部が詰まって血流が途絶えてしまったことによるものです。2〜3時間以内に処置をすればある程度の視力は戻りますが、そのゴールデンタイムを逃すと回復の見込みがなくなります。

これらは迷わずすぐ来てください。救急車を呼んでも構いません。

次に、数時間以内で来て欲しいもの。

  • 急性緑内障発作:もともと目が良かった年配の方に多いです。目の中で白内障が進んで大きくなることにより、目の中の水(房水)の流れを堰き止めてしまって、目の圧が急激に上がります。症状は、目の痛み、見えにくさ、頭痛、吐き気などです。頭痛や吐き気があるので脳外科や内科に行ってしまうこともありますが、その時に目の痛みや見えにくさがあるようなら、眼科疾患かも、と疑って欲しいです。一晩我慢すると失明することもありますから、我慢しないですぐ受診してください。連れてきてくれる人がいなければタクシーで(失明を防げたら、タクシー料金なんて簡単に元が取れます)。場合によっては、救急車でも。
  • 網膜剥離:有名な病気ですね。視界の一部に雲がかかったように見えなくなります。前兆として、飛蚊症(視界に黒い虫のような点が飛ぶ)や目を動かした時にやたら光が見えたりすることがあります。若い人は目をぶつけた後に、中年以降の人は何もしなくても起きる可能性があります。
  • 急に目が痛くなったり見えにくくなった場合:コンタクトレンズから細菌やアメーバがついて感染している場合や、他の原因で炎症が起きている場合など。いろいろ考えられますが、数時間で急激に見えにくくなったり、痛くて普通にしているのが難しい場合には翌朝まで待たずに受診した方がいいです。

翌朝で良いもの

たくさんありますが、大雑把にまとめるとこんな感じです。

  • 充血して目やにや涙が出る。多少痛いけど見え方はほとんど変わらない。
  • 症状が徐々に出てきたもの。1週間前から何と無く見えにくい。異物感が徐々に強くなってきた、など。

それ以上待たずに受診して欲しいけど、翌営業日でいい場合が多いです。

とりあえず様子を見ても良いもの

  • 結膜下出血:しろ目のところにベターっと赤い血が出て、内出血したような形になります。見え方が変わらなければ、量のいかんにかかわらず様子を見て良いです。血液サラサラのお薬を飲んでいる人はよくなります。ちょっと気持ち悪いかもしれませんが、下の方に写真載せときますね(苦手な方は下までスクロールしないようご注意ください)。
  • 一瞬〇〇だった:これ、意外と良くある訴えです。「一瞬痛かった」とか、「一瞬ピカッと光って見えた」とか。一瞬で症状がなくなるものは、たいてい様子見て大丈夫です。症状が數十分〜数時間続く、またはなんども繰り返して出るようなら受診してください。

すでに病院にかかっている方は、診断がついているものに関しては、かかりつけの先生に聞いてください。

大雑把にまとめると

急に見えなくなる、すごく痛い、などの症状がある場合は、急いで来てください。

目やにや充血があっても、見え方がそれほど変わらないものは、翌営業日でも良いことが多いです。

あとは、わからなかったら病院に直接電話して聞いて下さいね。

 抜けてることあったら、同業者の皆様、ご指摘くださいませ。

以下写真です。

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結膜下出血です。白目の内出血です。見た目のインパクトが強く、びっくりして来院される方が多いですが、そのまま自然に治るのを待つしかありません。

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こういう血管が見えるのは充血。こちらは受診してください。

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