スクラブ洗顔料について

9月も後半になり、だいぶん涼しくなってきました。

今年の8月はとても暑かったですね。東京では35℃を超える猛暑日が続き、日差しの強い毎日でした。ようやく、涼しくなり、日焼けの季節もそろそろおしまいです。

女性は日焼けしたくない人が多いですよね。
皮膚の老化の原因の大部分は日焼けなので、なるべく日焼けしないに越したことはないと思いますが、日常生活を送る上で、全く紫外線を浴びない生活というのも現実的ではありません。

それに本当のところ、全く日に当たらないと、ビタミンD合成ができなくて、あまり健康によくありませんね。



それはともかく、夏の間に日焼けしたくすんだ肌をスクラブ洗顔料で落とそう、という発想があるようです。

スクラブ洗顔料」とは、洗顔料の中に小さなスクラブ(粒子)が入っていて、そのつぶつぶで古い角層をこすり落としたり、毛穴の中の汚れをとる、というコンセプトの洗顔料です。


スクラブ洗顔料が最初に発売されたのは、30年ぐらい前だったと思います。当時私はまだ眼科医になりたての頃でした。

巷でも結構流行したと思うんですが、実は、スクラブ洗顔料は、眼科医の間でもちょっとした話題になっていました。

というのは、洗顔料の中に入ったスクラブ粒子が、顔を洗うときに目に入ってしまって、眼瞼結膜(瞼の裏側の粘膜の部分)について取れなくなるのです。そうすると、角膜(黒目)の表面に触ってしまって、コロコロした異物感があるのですね。

結構話題になって、眼科の専門雑誌のコラムなどのところに、
「患者さんの結膜についていたスクラブ洗顔料の粒子を取った」
というような話が掲載されたりしていました。

そんなある日、当直で病院に泊まったのですが、当直室で布団に入って寝ようとすると目にコロコロと不快な感じがありました。どうやっても自分では取れないのですが、たまたま家から持ってきた洗顔料が「スクラブ洗顔料」だったので、
「ああ、これは、スクラブ粒子が入ったな」
と、自己診断して、とにかく我慢して寝ました。

翌朝、先輩が出勤してきたので、
「すみません、スクラブ洗顔料が目に入ったみたいなんで取ってください」
とお願いすると、先輩は
「いいよ!」とすぐ診察してくれました。

そして、
「あ、あったあった、結膜にくっついてるよ!」
「スクラブ粒子、初めて見た!」
と大喜びで取ってくれました。

どうして私がそのときスクラブ洗顔料を持っていたのかは、よく覚えていませんが、多分流行していたので購入し、結膜異物として話題になり始めたので使わず置いておいて、当直の時にたまたまそれしかなくて持って行った、という感じかな、と思います。

後日、他の先輩たちから
「お前〜、眼科医のくせにスクラブ洗顔料使うなよ!!」
とさんざん注意されたことも書いておきましょう。


ところで、このスクラブ粒子は何でできているのか、というと、以前はプラスチック製のマイクロビーズが使われていたようです。

でも、最近はプラスチックによる環境汚染が問題になり始めて、種子とかセルロースとかコーンスタートとかの自然な素材が使われるようになったようですね。

確かに、時々外来で、スクラブ粒子が取れなくなった人を見かけることがありますが、以前のスクラブ粒子はつるんとした球状の形のものが多かったですが、最近のものはちょっと不規則で尖ったような形をしていたりします。

コーンスターチなら目に入ってもそのうち溶けるのかもしれませんが、種子などはそう簡単には溶けないでしょうし、何より異物感があるのは快適ではありませんよね。

そして、何より、
肌のくすみは本当にスクラブ洗顔料でこすってとれるのか?
という問題ですが、個人的には、取れないんじゃないか、と思います。

逆に、あんな粒子の入ったものでこするのは、肌にヤスリをかけて角層に傷をつけているようなもの。そんなことをしたら、肌に炎症が起きて、長い目で見ると逆に肌を老化させてしまうんじゃないかな、と思いますが、事の真偽は機会があったら皮膚科の先生に聞いてみることにしましょう。

何れにしても、スクラブ洗顔料は目に入らないように注意してください。




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