補装具の医学的意見書 記載のポイント
前回、円錐角膜のコンタクトレンズは障害者総合支援法で補装具として金額の一部が支給される可能性がある、ということを書きました。
円錐角膜の方には障害者総合支援法の補装具としてコンタクトレンズ費用が一部支給される可能性があります
これについては、実は、いろんな情報が錯綜していて、私自身もこれまでどれが本当なのかわからず混乱していた部分があったのですが、つい最近詳細を知っている人から教えていただくことができたので、記載したいと思います。
まず、障害者総合支援法では補装具(の代金)は基本的に「障害者手帳に該当する人」に支給されます。
それでは、視覚障害での身体障害者の基準はどのようになっているかというと、下の表のように定められています。ここで「視力」と書いてあるのは、眼鏡・コンタクトレンズで矯正した視力のことを表しているので、かなり低い視力でないと認定されないことがわかると思います。
円錐角膜が重症になってくると、矯正視力を出すために非常に強い近視や乱視のレンズが必要になってきます。すると、たとえ視力検査で眼鏡矯正視力がある程度出たとしても、実際に5.0Dを超えるような強度乱視のレンズを入れた眼鏡なんてかけて生活することはできません。グラグラしてしまって実用に耐えません。左右の度が大きく違う眼鏡も同じです。これらは、たとえ眼鏡矯正視力が出たとしても、現実的には装用可能な眼鏡がないという例です。
また、円錐角膜がさらに重度になると、角膜の非対称性と不正乱視のために眼鏡矯正視力自体もがさらに不良になってきます。
しかし、そういう人でもハードコンタクトレンズを装用すれば、屈折異常(近視、乱視、不正乱視)はほぼ矯正されますから、矯正視力は出ます。
視覚障害は視力が相当悪くないと認定されないので、円錐角膜がどんなに重度でもコンタクトで視力が出ている間は、円錐角膜単独で視覚障害者に認定されることはほとんどあり得ません。
ならば、円錐角膜のコンタクトレンズは、補装具として認められないのでしょうか?
実は、障害者総合支援法では、必ずしも障害者手帳がなくてもそれに相当するぐらい困っている場合には、コンタクトレンズが補装具として認められることがあるそうです。その判断基準になるのは眼科担当医が記載する「医学的意見書」です。前回も出しましたが、もう一度載せておきます。
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医学的意見書の、現症(視覚障害の状態)、視力、意見の欄に事実をわかりやすく記載するのがキーだそうです。
- 現症には、重度の円錐角膜であること。
- 視力の欄には、裸眼視力、眼鏡矯正視力。
- そして、意見のところには、たとえ視力が0.2〜0.3程度あったとしても、装用可能な眼鏡では日常生活を送るのに必要な視機能が得られないこと。就業や就学にはコンタクトレンズが必要不可欠であり、コンタクトレンズ以外に改善の手段がないこと、などを明記する。
というのが、ポイントです。
補装具としてのコンタクトレンズの耐用年数は4年とされているそうですが、これも、例えば2年ぐらいでレンズが傷だらけになって、目に傷がついたりアレルギーの原因になったりするリスクがある場合には、新しいコンタクトレンズが必要な理由を書き添えて申請すると支給される可能性があるそうです。
ただし、支給の基準や金額は各自治体によって異なるので、ある自治体で支給されたものが、別の自治体で支給されない、あるいは支給される金額が違うということもあり得ます。
先進的な技術があれば治るをモットーに、円錐角膜治療で進行を止めるための角膜クロスリンキングを日本で初めて導入した実績があり、国内の角膜クロスリンキング手術を牽引しています。また新しい角膜内皮移植DMEKの執刀ができる数少ないドクターの一人です。