小児の円錐角膜への角膜クロスリンキング

しばらく間があいてしまいました。本日は、小児(子供)の円錐角膜と角膜クロスリンキングについて解説したいと思います。

円錐角膜は小学校高学年ぐらいから発症する

一般的には円錐角膜は、中高生から大学生ぐらいの若者に発症することの多い病気です。発見のきっかけになるのは多くは学校での視力検査で、「去年までよく見えていたのに今年は急に視力が落ちた」「メガネが合わなくなった」と指摘される方が多いです。そして、学校から「再検査」の紙をもらって眼科を受診した時に、乱視の程度や軸(方向)が通常とは違う、角膜のカーブが普通と違ってかなり尖っている、などの要素があると「円錐角膜では?」と気付かれるわけです。その後、角膜形状解析検査という検査を行なうことで本当に円錐角膜なのかどうかがわかります。

 

さて、通常は14歳以上の年齢に発症することが多い円錐角膜ですが、時々13歳以下の小学生や中学に入ったばかりぐらいの年齢でも発症することがあります。私はこれまでかなり多くの円錐角膜の患者さんを診察してきましたが、一番年少だった子は8歳でした。その他にも、9歳、10歳といった子供たちにも複数出会ってきました。

 

小児の円錐角膜の特徴

一般的に言われていることは、小児の円錐角膜は進行が早く、また重症化することが多いということです。理由は不明ですが、子供は角膜の大部分を占めるコラーゲンが柔らかいということが関連しているのかもしれません。

アトピー性皮膚炎などを合併していることや、目を擦る癖がある人は円錐角膜が進みやすいのではないか、ということは強く疑われていますが、それ以上に年齢が若いことは円錐角膜を進行させる一番大きな危険因子と言って良いです。

 

子供の円錐角膜への角膜クロスリンキングは必要ですか?

子供の円錐角膜にこそ角膜クロスリンキングを!

小児の円錐角膜は、その後に進行する頻度が高く、また重症化してしまう可能性も大きいので、診断がついたらなるべく早くに角膜クロスリンキングを行い、進行停止する価値が高いと言えます。これはすでに世界的なコンセンサスになっている、と言って良い状態です。

大人の場合には、本当に円錐角膜が進行しているかどうか、何ヶ月かおきに複数回繰り返し検査を行なって、進行している場合にのみ角膜クロスリンキングを行うことが多いです。それは、角膜クロスリンキングは安全性が高い手術とはいえ、他のあらゆる手術と同様、リスクがゼロというわけにはいかないですし、視力回復のための手術ではなく進行を停止させるだけの手術なので、進行していない人にやるのはやりすぎだからです。

しかし、子供で円錐角膜と診断された場合には、ほぼ全例がその後に進行することがわかっています。待っている間に進行してしまった場合には元に戻すことはできません。しかも、小中学生の場合には、数週間で驚くほど進行することもあります。私たちは、患者さんが10歳代、特に13歳以下の場合には、円錐角膜の診断がついたら経過観察をせずにできるだけ早くに角膜クロスリンキングを行い、それ以上悪くならないように進行停止をする方針で診療を行なっています。

私たちがこれまでに行なった13歳以下の症例への成績では、角膜クロスリンキング手術前から最終観察時(術後1〜7年まで幅がありました)まで見て角膜形状が悪化していなかった症例は8割を超えていました。また再手術が必要だったのは6%程度でした。これは14歳以上の場合では、それぞれ92%と2%ですので、13歳以下の子供は14歳以上の人たちに比べるとやや止まりにくいという結果と言えます。それでも何もしなければおそらくほぼ員が進行していたと考えられますので、大きな効果があったと思っています。

 

術後にもう一度進行した場合には?

もしも角膜クロスリンキングを行った数年後にもう一度進行した人に対しては、2回目の角膜クロスリンキングを行うことができます。再手術の場合でも、合併症率などは1回目の手術と変わらず問題なく行えることがわかっています。

 

子供の場合にはどの術式が向いていますか?

小さな子供、特に小中学生は進行が早いので、できるだけ確実に進行停止できる方法(標準法、または高速照射法)で施術するのが良い、というのも海外ではよく言われていることです。その理由は、標準法、高速照射法の方が経上皮照射法に比べて長期的に進行停止する確率が高いことが明らかにされているからです。

ただ、日本の場合、経上皮照射法でしか施術していない施設も多くあります。経上皮照射法を小児のクロスリンキングに用いることは、現時点では海外ではあまり推奨されていませんが、何もしないよりはずっと良いと思います。

 

ハードコンタクトレンズや目薬などでなんとかできませんか?

小中学生で円錐角膜と診断されて、”進行予防のため””治療のため”という理由でハードコンタクトレンズを処方されているお子さんを見かけることがあります。ハードコンタクトレンズは視力矯正という意味では非常に優れていますが、装用すること自体が治療になったり、進行予防効果があるというエビデンスはありません。点眼薬でも円錐角膜の進行を止める効果が確認されているものはありません。

できれば、小さなお子さんの場合には、他のどの治療よりも先にまず角膜クロスリンキングを行なっていただきたい、と思います。

 

参考文献

  1. Baseline factors predicting the need for corneal crosslinking in patients with keratoconus. Kato N, Negishi K, Sakai C, Tsubota K.PLoS One. 2020 Apr 16;15(4):e0231439.
    初診時に「これから円錐角膜が進行するか」を予測する因子は、①年齢、②角膜の突出具合であること
  2. Corneal Cross-Linking for Paediatric Keratoconus: A Systematic Review and Meta-Analysis. Kobashi H, Hieda O, Itoi M, Kamiya K, Kato N, Shimazaki J, Tsubota K, The Keratoconus Study Group Of Japan.J Clin Med. 2021 Jun 15;10(12):2626. doi: 10.3390/jcm10122626.PMID: 34203646
    小児の角膜クロスリンキングのメタ解析論文

 

 

 

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