コンタクトレンズによる感染症
6月になりました。
緊急事態宣言も解除になり、今月から学校が再開されるところも多いと思います。
ただ、まだ分散登校したり、三密回避のための工夫が必要ですね。
部活動が再開されるのは、もう少し先になるでしょうか。
さて、近年、子供の近視が増えていると言われています。
最初はメガネで矯正するお子さんが大部分ですが、少し大きくなってくるといろんな理由からコンタクトレンズにしたい子も増えてきますよね。
例えば、小学生でもサッカーとか体操とかのスポーツを頑張っている場合、メガネというわけには行きませんよね。
また中学・高校になってくると、部活動をする割合も増えるし、おしゃれの意味からもメガネよりコンタクトレンズにしたい、という人も出てくるでしょう。
コンタクトレンズは、以前はハードコンタクトレンズの方が安全性が高いということで多く処方されていたように記憶していますが、最近はソフトコンタクトレンズの割合が多くなってきていると思います。ソフトコンタクトレンズは、何と言っても装用感が良いこと、そして大きいのでスポーツのように身体を動かすことをしても外れにくい、というのがメリットです。
ただ、ソフトコンタクトレンズにもデメリットがあります。
1つ目は感染症。そして、2つ目はアレルギーです。
これから梅雨が近づいて、いろんな菌が繁殖しやすい時期になります。
今日は、コンタクトレンズの感染症について解説したいと思います。
感染症というのは、細菌とか真菌(カビ)とか寄生虫(アカントアメーバなど)によって、身体に炎症が起きてダメージを受けることです。
目にも感染症が起きることがあります。
黒目(角膜)の表面には、上皮細胞という細胞があります。上皮細胞は、隣の細胞との間に強固な結合を持っていて、外界のものをちょっとやそっとでは中に入れないバリア構造を作っています。
この上皮細胞ですが、コンタクトレンズを使っているときに角膜表面に傷ができると、そこだけバリア構造がなくなってしまいます。すると、普段は目の中に入っていくことのできない微生物(細菌や真菌やアメーバなど)が角膜の中に入り込んでしまうことがあります。
そうなると、とても痛く、炎症を起こして角膜は白っぽくなり、周りの白目は強く充血して赤くなります。
炎症の程度によっては、痛みで目を開けられない、開けても黒目が濁ってしまって視力が下がる、などの症状が現れます。
適切な治療が必要ですが、治療がうまくいかないと最悪の場合には大幅な視力低下に至ることもある重大な病気の一つです。
なので、コンタクトレンズをするときには、くれぐれも感染症に注意が必要です。
ハードコンタクトレンズの場合には、角膜にキズがあると痛くてコンタクトレンズがつけられないために、普通はあまり無理はできません。
ところが、ソフトコンタクトレンズの場合には、コンタクトレンズをつけると痛みがマスクされてしまうために、本当はキズがついているのにコンタクトレンズをいつもより長時間してしまうことがあります。
さらに、キズ口に菌がつくと、バリアが壊れているために菌が容易に角膜内に侵入してしまいます。
ですので、ソフトコンタクトレンズの場合には、より感染症に対して慎重になる必要があるのです。
2週間とか1ヶ月とか、場合によっては1〜2年使うタイプのソフトコンタクトレンズの場合、日中はレンズをつけていても、夜は外してケースに入れて消毒をすると思います。
消毒の方法は、昔は煮沸消毒でケースごと煮沸していましたが、最近は洗浄液につけおきするタイプのものが多くなってきました。すると、ケースの内側はきれいだとしても、ケースの外側や、フタの溝の部分がちゃんと消毒されていないことが多く、そういうところに菌やアメーバがたくさん繁殖してしまいます。
そういう菌やアメーバが目について感染症を起こす人が増えてきたと言われています。
ソフトコンタクトレンズを使用する際には、
・ 調子が悪いとき(充血している時や痛みがある時)には決して無理をしないこと
・ レンズを扱うときにはしっかり手を洗い、レンズの消毒の際にはケースまできれいに保つこと
この2点に十分な注意をしてください。
そして、子供さんの場合には、コンタクトレンズの着脱はすぐ上手になる子が多いのですが、レンズの管理を自分でしっかりできるとは限らないこともあります。特に、小中学生ぐらいの子供の場合には、親御さんか誰か大人の方が見てあげることがとても大切だと思います。
清潔さという点からいうと、ワンデータイプが一番お勧めです。少なくとも、レンズの消毒が悪くて菌がついてしまう心配はありません。
少し価格は高くなってしまうかもしれませんが、万一感染症になって目にキズが残って視力が下がったときの損失を考えれば、決して惜しくはないはずです。
私自身も、これまで中高生でコンタクトレンズに関連する感染症の患者さんを何人か診察してきましたが、みんなソフトコンタクトレンズを使っていました。
若くてきれいな目に起きた感染症を診ると、診察する私たちもとても胸が痛みます。
便利な矯正器具ですが、くれぐれも注意して、使って欲しいと思います。
先進的な技術があれば治るをモットーに、円錐角膜治療で進行を止めるための角膜クロスリンキングを日本で初めて導入した実績があり、国内の角膜クロスリンキング手術を牽引しています。また新しい角膜内皮移植DMEKの執刀ができる数少ないドクターの一人です。