オルソケラトロジーに関する意見をいただきました。

先日、オルソケラトロジーでも近視の進行抑制ができるらしい、と言う話を書いたところ、とても真面目にコメントをくださった眼科医の先生がいました。

オルソケラトロジーで近視進行が抑えられると言っても、大勢の人のデータを統計計算すると有意差が出るぐらいで、完全には近視になるのを防げない、あるいは、度数を良くても半分ぐらい減らせるぐらい(しかも、今すでにある近視度数を減らせるわけじゃなくて、これから進行する量を減らせるかな、と言うレベル)しか効果がない。なのに、それをまるで近視の進行が完全に止まるかのように大げさに吹聴するような風潮がある。

そして、経営のためにオルソケラトロジーレンズを売りたいがため、中には極めて適当な説明や杜撰な処方をする医師がいる。子供のために良かれと思って、お母さんたちは一生懸命、何年もの間高いお金を払い続け、コンタクトのメンテナンスを頑張っているのに、その気持ちを踏みにじっているかのような例が散見される。

コメントをくださった先生は、普段、たくさん子供の診察をされているので、近視になりたくないからと言って親子でオルソケラトロジーを一生懸命やった挙句、感染症になったり、アレルギーがひどくなったりした子供をたくさん診てこられたそうです。



それで、オルソケラトロジーの長所は理解しているものの、このような杜撰な処方をする同業者に対して、どうして良いのかわからない、また、患者さんにも積極的に勧めることがためらわれる、と言うようなコメントの内容でした。


これは、きっと本当にそう言う事例は枚挙にいとまがないんでしょうし、とても悩ましいことだと思います。


レーシックなどの近視矯正手術でも、当初、眼科医じゃない先生が導入して、専門知識がないために合併症のある患者さんがあちこちで発生した、と言うことがありました。
それをみた眼科医は、大昔の「佐藤氏手術」の悪い記憶も蘇り、「近視矯正手術は悪いもの」と言う固定観念ができてしまいました。

(註:佐藤氏手術とは、順天堂大学の佐藤勉先生が世界に先駆けて発明した、角膜の前面後面放射状切開術で近視を治すと言う術式です。多くの患者さんが治療を受け、当初はよかったのですが、何年も経ってから合併症が起きた、という顛末になった手術です。)



そして、レーシックのことをよく知らない善良な一般眼科医の先生たちも、
「あんな悪魔に魂を売るような手術!」
ぐらいの勢いで反対されたために諸外国に比べて、日本は屈折矯正手術の分野でかなり遅れを取ると言う事態になってしまいました。

これは、本来は、レーシック等の近視矯正手術の是非を論じる問題ではなくて、そう言う杜撰なことをする一部の医師が存在した、そして、残念ながら患者さんがそれを見抜けないと言うことが問題だと思います。



で、今回のオルソケラトロジーに対する懸念も、当時のレーシックと同じようなことなのではないかとなんとなく思ったわけです。

つまり、これはオルソケラトロジーそのものが良いのか悪いのか? という問題ではなくて、処方してはいけない人に処方しているとか、ちゃんとリスクに関する説明がされていない、管理が行き届いていない、と言う問題なんじゃないかと思います。


コンタクトレンズは手軽だし、手術でないのでハードルもそんなに高くありません。
アジアは特に近視人口が多いし、メーカーとしてもレンズが売れれば嬉しいし、積極的に処方してくれるドクターには感謝しかない、と言う感じでしょう。


それに対して、どうすればいいのか?と言う話ですが、

「過去と他人は変えられない。
未来と自分は変えられる」
と言うような言葉があります。

結局ここでもこれが当てはまるのではないかな、と思います。

我々ができることはとにかく、自分の目の前に来た患者さんに正確な情報とベストな治療を提供するように心がけることじゃないかと思います。と言っても、主観が入りますから、どれがベストなのかを見極めるのも難しい時がありますが。「国が認めた治療」だけが良いわけでもないですしね。そこは、専門家として勉強するしかないですね。


そして、もう一つの方法は、我々眼科医自らが、発信をしていくと言うことではなかと思います。

これだけインターネットで情報が氾濫して、なんでも調べられてしまう時代だからこそ、専門家からの真面目な情報提供が大切なのではないでしょうか。


一人一人が、病院の院内報みたいなものでもいいし、各自のホームページでもいいし、もしどこかから取材を受ける機会があるようならそう言った場所で、正しい情報を紹介するように尽力していくことが大切なんじゃないかな、と思います。

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