円錐角膜支援の会を立ち上げました
かなり間が空いてしまいました。今日はお知らせです。
一般社団法人円錐角膜支援の会を立ち上げました。
WEBサイトはこちらです。
なぜこんな会を作ったのか、については、「設立の思い」のところに短く記載しました。
角膜クロスリンキングは2003年にドイツの先生たちが初めてヒトの円錐角膜眼への治療成績を発表しました。それまで円錐角膜は”治らない病気”でした。円錐角膜になってしまったら、とりあえず見えにくさはハードコンタクトレンズで矯正することはできても、進行を止める手段はありませんでした。そして重度になってハードコンタクトレンズもできなくなったら、患者さんは角膜移植を受けるしかありませんでした。
円錐角膜は10〜20代で発症して、年齢とともに進行していく病気なので、中高生ぐらいで発症して「将来角膜移植が必要になるかもしれませんよ」と言われて将来に大きな不安を感じてメンタルの状態が悪くなる人、または本当に中高年になってから仕事ができなくなってしまう人などを見かけることがありました。ところが、角膜クロスリンキングの登場で90%以上の人で円錐角膜の進行を止めることができるようになったのです。
円錐角膜が発症してすぐに、まだ乱視がそんなに強くなくメガネやソフトコンタクトレンズでも生活に必要な視力が得られるうちに角膜クロスリンキングを行えば、その人はメガネでもソフトコンタクトレンズでもハードコンタクトレンズでも、なんでも使える状態を維持できます。よく見たい時にはハードコンタクトレンズ、スポーツの時にはソフトコンタクトレンズ、調子が悪い時にはメガネ、といった具合に使い分けもできるようになります。その状態であれば、普通の近視の人となんら変わりはありません。ところが、円錐角膜が進んでしまうと、ハードコンタクトレンズや円錐角膜用の特殊なレンズを使用しないと十分な視力が得られなくなります。それらのレンズを使っても1.0見えないという状態になることもあります。それでは日常生活に大きな制約が出てしまいます。
私たちは、2007年から角膜クロスリンキングを始めました。そして、病気の進行が本当に止まるのを自分たちでも実感しました。やがて数年経つと、世界中でたくさんの人が角膜クロスリンキングを受けるようになり、多くの国からも有効性と安全性を報告するデータが発表されるようになりました。
日本でも角膜クロスリンキングをする施設は徐々に増えてきて、現在では20以上の施設で受けることができます。私たちの調査では、2003年には全国で650件ほどの手術が行われています(円錐角膜への角膜クロスリンキングに限定。LASIK Extraなどは含んでいない)。しかし、円錐角膜の罹患率から計算した推定人数や、人口3億人のアメリカ合衆国で年間2〜2.5万人が手術を受けていることを考えても、日本の650人というのはどう考えても少なすぎるのです。本来であれば、この10倍は角膜クロスリンキングを受けた方が良い人がいるはずです。
角膜クロスリンキングが広まらない理由の一つに、保険診療になっていないということがあります。保険診療になっていないと、患者さんも、そして眼科医の中にも、角膜クロスリンキングが”怪しい治療”だと思っている人がいるようです。しかし、保険診療にならないのには理由があります。これについては、以前に少し書いたことがあります。
私たちも日本角膜学会と協働して厚生労働省に相談に行くなど、なんとか角膜クロスリンキングが保険診療にならないか活動はしていますが、現在もまだ角膜クロスリンキングが保険収載される見込みは立っていません。少なくともあと何年かはかかりそうです。
日本では、保険収載されていない治療も医師の裁量で行うことはできます。その場合は自費診療にせざるを得ません。すると、本来保険診療であれば自己負担がほとんどない未成年の患者さんも、治療費を全額自分で払わなくてはならないことになります。しかし、角膜クロスリンキングが必要な患者さんはたくさんいます。その何年かの間に、円錐角膜が進行してしまう人もたくさんいるのです。
海外の多くの国では、角膜クロスリンキングはすでに承認されており、患者さんはなんらかの治療費の公的補助が得られることがほとんどです。現在徐々に日本が取り残された状態になりつつあります。
そこで、私たちは円錐角膜支援の会を作り、個人や企業から広く寄付金を集めて、それを患者さんの治療費の補助として分配するシステムを作ろう、と考えました。初めから、全ての方に全額の補助はできないと思いますが、まずは未成年の方から、部分的にでもいいので治療費を支援したいと思っています。
私たちも、早く角膜クロスリンキングが保険診療になってほしいと願っています。でも、それまでの間手をこまねいて見ているのではなく、自分たちにできることから始めたいと思います。
よろしければ、ホームページをご覧いただき、ご賛同いただける方は寄付金のご協力をお願いできたら嬉しく思います。

先進的な技術があれば治るをモットーに、円錐角膜治療で進行を止めるための角膜クロスリンキングを日本で初めて導入した実績があり、国内の角膜クロスリンキング手術を牽引しています。また新しい角膜内皮移植DMEKの執刀ができる数少ないドクターの一人です。